不動産を売った後、権利証はどうなるのでしょうか
不動産を売却するとき、売主の方から、
「この権利証は売った後も取っておいた方がいいですか?」
と聞かれることがあります。
売買の決済時には、司法書士が売主の権利証(登記済証)や登記識別情報などを確認し、所有権移転登記を行います。
昔の紙の権利証の場合、登記手続きが終わった後に手元へ戻ってくることがあります。
しかし、その不動産をすべて売却してしまえば、その権利証はもうその不動産の所有権移転には使えません。
司法書士の間では、このようなものを俗に
「空権(からけん)」
などと呼ぶことがあります。
処分してしまっても基本的には問題ありません
その権利証に記載されている不動産をすべて売却し、ご自身にその権利が残っていないのであれば、古い権利証を持ち続ける必要は通常ありません。
そのため、登記完了後に、
「こちらの古い権利証はお返ししますか。それとも処分しましょうか」
とお聞きすることがあります。
「もう必要ないので処分してください」
という方もいれば、
「家を買ったときの記念なので取っておきます」
という方もいます。
どちらでも構いません。
記念に残しておきたいという方もいます
昔の権利証を見ると、
購入した年月日
当時の住所
法務局の印
和紙のような古い書式
などが残っていて、今の登記識別情報とはかなり雰囲気が違います。
長く住んだ自宅であれば、
「家を買ったときからずっと持っていたものなので、記念に残しておきたい」
というお気持ちも分かります。
それ自体に問題はありません。
ただし「何の権利証なのか分からなくなる」と少し厄介です
私が気になるのはこちらです。
何十年か経ってからご本人が亡くなり、ご家族が書類を整理していると、
古い権利証が出てくることがあります。
そうすると、
「この土地はまだうちのものなのでは?」
「相続登記をしなければいけないのでは?」
「この権利証があるということは何か権利が残っているのでは?」
と心配されることがあります。
しかし登記簿を調べてみると、
実は何十年も前に売却済みだった
ということがあります。
権利証だけ残っていると、売却した事情を知らない次の世代には、それが「生きている権利証」なのか「空権」なのか分かりません。
保存するなら「売却済み」と分かるように
そこで、売却後の権利証を記念として保管するのであれば、
例えば封筒に、
「令和○年○月売却済み・現在権利なし」
などと書いておくことをおすすめします。
売買契約書などと一緒に保管しておくのもよいでしょう。
そうしておけば、将来ご家族が見つけたときにも、
「これは昔所有していた不動産の権利証なんだな」
と分かります。
古い書類は、本人にとっては当然分かることでも、10年、20年後には事情を知る人がいなくなっていることがあります。
一枚の権利証に複数の不動産が記載されている場合は注意
ただし、
「売った後の権利証なら全部捨ててよい」
というわけではありません。
昔の権利証には、一枚の書類に土地や建物など複数の不動産がまとめて記載されていることがあります。
そのうち一部だけを売却し、別の土地や建物をまだ所有している場合には、その権利証が残っている不動産について必要になる可能性があります。
したがって、ご自身で判断して処分する前に、
その権利証に記載された不動産を本当にすべて手放しているのか
を確認することが大切です。
権利証があることと、現在所有していることは別の話です
ここは意外と重要です。
権利証は、
「今、その不動産を所有していることを証明する証明書」
というわけではありません。
不動産を売却した後でも、昔の権利証そのものが手元に残ることはあります。
現在の所有者が誰なのかを確認するときには、現在の登記記録を確認します。
ですから、
「権利証が出てきたから、この土地はまだ父のものだ」
とは限りません。
古い不動産書類は、少し整理しておくと後が楽です
不動産を売却すると、売買契約書、領収書、登記関係書類など、いろいろな書類が残ります。
その中に昔の権利証が混ざっていると、年月が経った後に事情が分からなくなることがあります。
不要であれば処分する。
記念に残すなら、
「売却済みの空権」だと分かるようにしておく。
ちょっとしたことですが、将来ご家族が書類を整理するときには、この一言があるだけでずいぶん違います。
西荻司法書士事務所でも、不動産売買の登記が完了した際には、古い権利証について返却するか処分するかを確認することがあります。
「昔の権利証が出てきたけれど、この不動産はまだ所有しているのだろうか」
という場合には、現在の登記記録を確認すれば分かります。
古い権利証だけで判断せず、登記簿と照らし合わせて確認することが大切です。
2026年8月28日掲載
※本コラムの内容は掲載日時点の法令・制度等に基づいています。最新の取扱いについては個別にご確認ください。