高齢化だけでなく「少子化」も司法書士の仕事に関係しています
以前、「高齢化時代の司法書士の役割」というコラムを書きました。
成年後見や相続の仕事をしていると、高齢化の影響を感じる場面はとても多くあります。
しかし、最近はそれと同じくらい、
少子化の影響も大きくなっている
と感じます。
子どもがいない。
兄弟姉妹も少ない。
親族が遠方に住んでいる。
頼れる家族がいない。
こうした方は、これからさらに増えていくと思います。
これまで家族の中で自然に行われてきたことを、家族だけでは支えきれない時代になりつつあります。
「子どもがやってくれる」が当たり前ではなくなります
以前であれば、高齢になった親について、
通帳を管理する
施設を探す
役所の手続きをする
実家を片付ける
亡くなった後の手続きをする
といったことを、子どもが担うケースが多くありました。
もちろん今でも家族が支えているケースはたくさんあります。
しかし、
そもそも子どもがいない
という方もいます。
子どもがいても一人だけで、遠方に住んでいたり、仕事や自身の家庭があったりして、すべてを担うことが難しい場合もあります。
「何かあったら家族に頼めばいい」
という前提そのものが、少しずつ変わってきています。
子どものいない夫婦の相続
少子化の影響を特に感じやすいのが相続です。
例えば、子どものいない夫婦の場合。
「夫が亡くなったら全部妻が相続する」
と思われていることがあります。
しかし、遺言がなければ、亡くなった方の親や兄弟姉妹などが相続人になる場合があります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、その子である甥や姪が関係してくることもあります。
普段ほとんど付き合いのない親族と遺産分割の話をしなければならないケースもあります。
こうした場合には、
元気なうちに遺言を作っておく
ということが大きな意味を持つことがあります。
相続人が少ないのではなく「身近な相続人がいない」
少子化が進むと、
「相続人が簡単になる」
とは限りません。
むしろ、
子どもがいない
兄弟姉妹も亡くなっている
甥や姪が各地にいる
長年交流していない親族がいる
というように、相続関係がかえって分かりにくくなることがあります。
相続人を確認するために戸籍をたどっていくと、
「こんな親族がいたとは知らなかった」
ということもあります。
司法書士が行う相続手続きでも、こうしたケースは今後増えていくのではないかと思います。
認知症になったとき、誰が支えるのか
もう一つ大きな問題が成年後見です。
判断能力が低下したとき、
「家族が財産を管理してくれる」
とは限りません。
身近な親族がいなければ、司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職が成年後見人として選任されることがあります。
実際、成年後見の仕事をしていると、身寄りのない方や、親族による支援が難しい方に関わることがあります。
成年後見人の仕事は、単に預金を管理することではありません。
施設、病院、行政、福祉関係者などと連絡を取りながら、その方の生活を支えていく必要があります。
ここでも、
家族だけで支えるのではなく、地域や専門職が一緒に支える
という考え方が重要になります。
実家や不動産をどうするのか
少子化は不動産の問題にもつながります。
例えば、
親が施設に入った後の実家。
子どもが一人しかおらず、その子も遠方に住んでいる。
あるいは子どもそのものがいない。
こうした場合、
誰が建物を管理するのか。
誰が売却の手続きをするのか。
亡くなった後は誰が相続するのか。
という問題が出てきます。
相続登記の義務化や空き家問題もあり、
「不動産を次の世代へどう引き継ぐか」だけでなく、「そもそも引き継ぐ人がいるのか」
を考える時代になってきたように思います。
家族が少ないからこそ、元気なうちの準備が大切です
子どもや親族が少ないこと自体が問題なのではありません。
大切なのは、
自分が判断できなくなったときに誰に頼むのか
亡くなった後に財産をどうしたいのか
を元気なうちに考えておくことです。
例えば、
遺言
任意後見
財産管理についての準備
不動産の整理
など、事前に検討できることがあります。
すべてを一度に決める必要はありません。
ただ、
「そのときになれば誰かが何とかしてくれる」
ではなく、
少しずつでも考えておくことが大切になっていると思います。
司法書士だけですべてを解決できるわけではありません
少子化によって家族の人数が減ると、司法書士など専門職の役割は今まで以上に大きくなるかもしれません。
しかし、司法書士だけですべてを支えることはできません。
介護や生活支援であれば、地域包括支援センターやケアマネジャー。
税金であれば税理士。
紛争であれば弁護士。
行政や社会福祉協議会などが関わることもあります。
以前のコラムでも書きましたが、
必要な支援につなげることも、これからの司法書士の大切な役割
だと思っています。
「家族が支える」から「地域で支える」時代へ
高齢化というと、
「高齢者が増えること」
に目が向きます。
少子化というと、
「子どもが減ること」
と考えます。
しかし、この二つが同時に進むことで起きるのは、
支援を必要とする人が増える一方で、それを家族として支える人が少なくなる
ということです。
相続、成年後見、不動産、遺言。
司法書士が扱う仕事の多くは、この変化と無関係ではありません。
これからの司法書士には、登記や書類を正確に作ることだけでなく、
本人や家族の話を聞き、
必要な制度を考え、
必要であれば他の専門職や地域の支援につなげる。
そんな役割が、これまで以上に求められていくのではないかと思います。
2026年8月28日掲載
※本コラムの内容は掲載日時点の法令・制度等に基づいています。最新の取扱いについては個別にご確認ください。